自分で作って食べようにも
キッチンは母の城だったから、
勝手に材料を消費すると
「一丁前に食べるのね。出来損ないのくせに」
と心底冷たい目で暴言を吐かれるので作れなかった。
そんな家だったから高校卒業後は没交渉。
存在すら忘れていた。
私と家族の溝を気にかけていた祖父母が
間に入って連絡先だけは控えるように
言ってくれたけど、かけたこともかかって来たこともない。
どっちも都内に住んでいるから
会おうと思えば会える距離だけど、
会う必要がなかった。
私はといえば、高校を出た後に
学費を捻出するために二年ほど
今でいう地方の期間工のようなところで働き、
二年遅れで進学した大学を出た後は
普通に社会人やって、それなりに独身生活を謳歌している。
その頃SNSに、
日常のちょっとした嬉しかったこととか、
趣味のツーリング中に撮った写真や、
友人たちと飲んだりランチしたりした時の写真をupしていた。
お猫様二匹にお仕えしている光景とか。
没交渉が十年以上続いたある日のこと、
突然母から連絡が入った。
上に書いたようなほかほか家族なので、
正直反応に困った。と
りあえず出てみたら金策だった。
事情も言わずに3億都合しろと言ってきた。
そんな大金あるわけないし、
理由を聞いても答えず、
話しにならないからこちらから通話を切った。